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なぜいまナチス関連映画が多い? その理由を考えてみた

2016.09.04 | 過去を学んで未来をみる

著者:電気ヒツジ

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ナチスドイツとユダヤ人虐殺について昔から興味を持っています。きっかけは、中学生の頃に『夜と霧』を読んだことと、当時放映されていたNHKスペシャル『映像の世紀』を見たこと。大量虐殺を指示したアイヒマン本人が、「命令に従っただけ」とサラリーマンのような発言をする映像が記憶に残っています(私はそれ以来、従順な人は一番危険だと思ってます!)。

数年前にはポーランドのアウシュビッツ強制収容所に行きました。寒さに凍えながらぬかるんだ地面に立っていると、世界から打ち捨てられたような気持ちになります。そして一番驚いたのは建物に漂う臭い。もちろん綺麗に掃除されていますが、あちこち人間の臭いがするんです。目の前の建物に虐げられながら生きた人たちがいたことを、急に現実のものとして感じました。

そんな背景もあり、 ここ1〜2年でナチスやホロコーストに関する映画がたくさん公開されていることが気になっています。ぱっと思いつく作品だけでも、『帰ってきたヒトラー』『アイヒマンショー/歴史を映した男たち』『サウルの息子』『ヒトラー暗殺、13分の誤算』『顔のないヒトラーたち』など多数。ナチス関連映画が多く公開された理由には、2015年が戦後70年だったこと以外にも2つあると思っています。

1)ヨーロッパを揺るがす移民問題
ユダヤ人はもともと迫害され、移動を続けた民族。いまで言う移民です。昨年はヨーロッパへのシリア難民の流入が社会問題化した年でもありました。ホロコーストは遠い昔の出来事ではなく、いま目の前で起こっている難民問題とリンクしていると考える観客が多かったのではないでしょうか。

2)ヒトラーのような政治家への危惧
ヨーロッパ各国では反EU・反移民を掲げる極右政党が票を伸ばしています。アメリカでも大統領候補であるドナルド・トランプがメキシコ移民を攻撃して話題になっていますね。トランプを熱狂的に支持しているのは、失業率の高い中西部の労働者階級。彼らにとってトランプは、生活や雇用に対する不満や怒りを代弁してくれる存在です。自分たちがうまくいかない理由を、移民やテロリスト、国際経済のせいにしているわけ。トランプが用意したのは「白人」で「アメリカ人」であるだけで、”グレート・アゲイン”を夢見ることができる物語でした。

この現象、ヒトラーが出てきた時代に実に似ています。第一次世界大戦の敗北後、貧しい生活を強いられていたドイツで、ナチ党は国民の怒りや不満を糧に台頭しました。

『ヒトラー暗殺、13分の誤算』では、ユダヤ人でない一市民が時代の変化をどのように感じていたかがわかります。この映画を観て思うのは、一番恐ろしいものは独裁者でも狂信的な軍隊でもなく、一般市民の思考停止だということ。隣で恐ろしいことが行われているのに見て見ぬふりをし、正しいことなのかを自分の頭で考えられなくなってしまう。人間の無関心こそが悪の温床になると感じます。

人間らしさとは何かを考えるなら『サウルの息子』を。ユダヤ人のサウルはアウシュヴィッツの収容者の中から選ばれた”ゾンダーコマンド”で、同胞をガス室に送り、遺体の焼却を行う役割です。数ヶ月は生き延びることができますが、毎日おぞましい光景を見続けた精神は死に、無感覚になってしまう。そんなサウルが最後の希望としたのは、息子とおぼしき遺体をラビの手で正しく埋葬することでした。

参院選は与党が大勝し、改憲勢力が3分の2を超える結果となりました。この結果が、日本をどのように変えるかはまだわかりません。ただ、これから国民投票が発議されるのであれば、それまでにナチス関連映画を観てどんな政治を求めるか考えてみてはいかがでしょう。私たち市民が意思表示できる唯一の機会は投票ですから。


「ヒトラー暗殺、13分の誤算」

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「ヒトラー暗殺、13分の誤算」(C)2015 LUCKY BIRD PICTURES GMBH, DELPHI MEDIEN GMBH, PHILIPP FILMPRODUCTION GMBH & CO.KG


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