STORY on bonobo

ヘイトスピーチはなぜ生まれる? 今だから観たい『ズートピア』

2016.08.10 | やっぱアニメだね

著者:電気ヒツジ

content-pc-trailer-xlarge-000008392

映画媒体を担当していたころ、来日した映画俳優・監督の記者会見に行くことがありました。質疑応答の時間に電波媒体(テレビ)からよく出る質問があります。それは「日本のどこが好きですか?」「好きな日本食は?」など、日本を褒めるように誘導する質問。作品の内容には全く関係ありませんが、これがテレビ番組のエンタメコーナーで一番視聴率が取れるコメントのようです。

国だとわかりづらいですが、初対面の人に「私のどこが好き?」「私の顔のパーツで好きなところは?」とか言われることを想像してみてください。ハイ、うっとおしいですよね。「なんでそんなに褒められたいんだ、コイツ」って思ってしまう。そんなわけで、外国人スターもポカーンとしながら「えーと、日本は素晴らしい国。スシは好きだよ…」とか、当たり障りのない答えをするのでした。

海外で活躍する日本人選手だけを報じるのも一緒で、その心理は「日本人選手はすごい」→「日本人すごい」→「自分すごい」という三段論法。成功者や国に自分を重ねることで自己承認欲求を満たしているんです。

近年は日本を褒める外国人が登場するテレビ番組や書籍がやたら増えていますよね。2020年の東京オリンピックを前に、外国人から見た日本がどんなものなのかを知りたいという興味もあるのでしょうが、それ以前に日本人全体が自信を失いつつあるのかもしれません。

長引く経済不況で日本のGDPは足踏みとなり、中国がアジア経済の中心に。日本の象徴でもあったソニーや家電メーカーは軒並み不振。韓国のサムスンに追い抜かれ、シャープは台湾の鴻海傘下に。日本人のプライドとなっていた「アジアのナンバー1」「経済大国」の座を失ったことが、多くの日本人にとっての不都合な真実なんじゃないかと思います。

こうした劣等感の怖いところは、自分を肯定するために他者を攻撃するようになるところ。周りを蔑むと相対的に自分が優位に立つことになるためです。ヘイトスピーチまで行かなくても、中国や韓国を差別するコメントをする人が増えてきているのは偶然ではない感じがします。

そんな差別や偏見について考えるのに『ズートピア』はぴったり。秀逸なのは、公明正大のつもりでいた主人公のジュディが自分の偏見を露呈し、それがズートピアの分裂につながってしまうというところ。自称リベラルの私も無意識にレッテルを貼っていたりするので、このシーンにはハッとさせられました。とはいえ、擬人化されたキャラクターたちの豊かな表情と動きは観ているだけで楽しいし、アクションも笑いもたっぷり入っているので説教臭さはまるでなし。アメリカの人種差別や移民問題を考えるだけでなく、日本でも自分たちの社会を照らし合わせて観たい映画です。


「ズートピア」

content-pc-main-large-000008392


「ズートピア」(C)2016 Disney


最新一覧
月別一覧
カテゴリ